対談インタビュー ゲスト: 平原 依文さん
皆さん、こんにちは!CACTUS TOKYO PRチームの井上です。夏の暑さもすっかり弱まり過ごしやすい季節となろうとしています。CACTUS TOKYOではブランドリニューアルを控え、ワクワクとドキドキがチーム内に漂う夏を過ごし、ようやく9月を迎えました。
今回はHI合同会社の代表であり、社会企業家の平原 依文さんにお話を伺いました。
日本のジェンダーギャップ指数は言うまでもなく、主要先進国の中で最下位。CACTUS TOKYOでは、プロダクトを通じてそんな女性をエンパワーしていくことも大切な価値観として活動しています。
今回は女性のリーダーシップ像としての平原さんご本人のお話や、共同編書著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』についてお聞きしました。
- 「境界線を溶かしていきたい」きっかけは留学時代に経験した二項対立
- 衝撃の褒め言葉とこれまでのルール
- 夢に魅せられる社会課題『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』
- アパレル産業での二項対立
「境界線を溶かしていきたい」きっかけは留学時代に経験した二項対立
―先ず始めに平原さんのプロフィールをお伺いさせてください。
平原さん 私は「世界中の境界線を溶かす」をパーパスとし、HI合同会社の代表をしています。小学校2年生の時から、単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学しました。その中で、国籍・人種など前提条件が違うので二項対立が起きるのは当たり前ですが、それが理由でお互いを否定しあうのは違うのではないか、と考えたのが活動の原体験です。
事業内容としては3つ。「社会ゴト」を「自分ゴト」として捉え、意識を変革する教育事業、企業のサステナビリティに関するコンサルティング事業、社会問題の「本質的な問い」を発信するメディア事業です。
―その留学時代に経験した二項対立というのはどのようなものだったのでしょうか。
平原さん 留学前も留学後も二項対立を感じ続けている子ども時代で、母と血縁関係のない事実婚の父と暮らしていたことで小学校でいじめを受けている時、私のクラスに中国籍の子が転入してきました。それ以降私ではなく、その子がいじめのターゲットになったのを目の当たりにして。でもその子は全くいじめには屈せず、その姿に感銘を受けて彼女のようになりたいと思い、中国に留学をしました。ですが、中国では私が日本人としてマイノリティです。そうやって、それぞれの変えられない属性の為に、二つに一つの、どちらかが弱い立場になるという瞬間に何度も遭遇しました。
熊谷 私も実は父が中国籍なので、とてもイメージがつくのですが、二項対立って考えなくて済むというメリットがありますよね。ものごとを二つに別け、どちらかを「正」と考えれば、もう片方は自ずと「悪」。それが本当に「悪」なのか。どちらにも当てはまらないものはないのか。思考停止が伴うものだと思います。
平原さん まさにそうです。私の考えるサステナビリティとは、究極、一人一人が枠にとらわれず自分の軸を持って過ごしている状態ですので、そんな人を増やすために「境界線を溶かしていきたい」と考えています。
衝撃の褒め言葉とこれまでのルール
―そんな平原さんはご自身の軸を持ち、実行していくリーダーとして、女性の憧れる女性と思われますが、「世界中の境界線を溶かす」という子ども時代の夢を実際の行動に移すにはどの様な経緯があったのでしょうか。
平原さん 子ども時代のこの様な経験も相まって、教育事業をフィールドに起業しようと高校時代から考えていました。大学卒業後企業に就職した経験があり、そのスキルを基に教育に貢献したいという思いが強まり退職しました。
―なるほど。具体的なエピソードがあるとお聞きしましたが。
平原さん 退職後のエピソードになりますが、日本の女性役員20名を相手にコーチングをするワークショップを開催した際、みなさん優秀な方で、女性にとってのリーダーシップを深める良いワークショップだったのですが、その中で「今まで言われた褒め言葉で一番嬉しかったのは?」という問いがありました。その回答は何だと思いますか。
熊谷 うーん、なんですかね。これまでの功績とか。
平原さん 「女性にしては凄いね。」「男性ホルモンいっぱい出てるね。」と言った労働社会でのマイノリティとしての女性であることを前提に発せられた言葉を参加者20名中19名が回答しました。驚きですよね。
熊谷 すごい数ですね...
平原さん これが凄いショックで、これを機にもう一度夢「世界中の境界線を溶かす」を思い出し、これまでの活動に至っています。
熊谷 なるほど。この女性リーダーたちには、女性の為の労働のルールや評価基準がこれまでなかったのですかね。「男性らしく」働くことは出来ても「女性らしく」とは言いませんよね。
井上 女性男性の区別のみでは立ち行かないと思っています。どちらかというと女性性、男性性の方が正しくて、女性性と男性性が程よいバランスが心地いい方にも適用できる基準作りをしていかないといけないですね。
夢に魅せられる社会課題『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』
ーそんな夢と言えば平原さんが企画・編集を担当された共同著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』はどの様な経緯で制作されたのでしょうか。
平原さん SDGsってどうしても主語が大きく、本当はその大きさに大小関係ないなと思っているのですが、それを自分ゴト化して前に進んでいる人、まだ形にできてない人も含め、意思がある人が表現できる1冊を作りたいなと考えていました。具体的な内容や出版社さんを検討している中でご縁があり夢にまつわる書籍の出版に至りました。
熊谷 その「まだ形にできてない人も含め」というところがこの書籍の良さですよね。登場人物たちの青臭い部分が出ていると言うか、話題性ではなく、緊急性や重要性に注視されていますよね。
平原さん そうです。202人はこちらから声をかけたのではなく、公募で集まった方々です。私たち先進国の目線では語れない課題や目線を公募だから集めることが出来ました。
井上 夢ってどんな人でも思い描いたことがあるので読者目線でもまた親近感が湧きますよね。読みながら「昔思い描いた夢に近いな」とか「将来こんな夢を描いてもいいな」とか。
平原さん そういう意味で言うと、Z世代・ミレニアム世代という枠組みですけど、親子や上の世代の方にも読んでいただきたいです。
ー出版から2年程経っていますが、202人のその後はご存知でしょうか。
平原さん はい、うち数名は一緒に活動もしています。とある企業さんで難民支援を進める際に一人呼んで、お話して貰ったりいいジョブマッチングが起きたりしています。他の方も夢が実際に達成できて、その他の新しいチャレンジに進んだ人も知っています。
アパレル産業での二項対立
ー今回お話を伺う中で、CACTUS TOKYOにも通ずる部分があると感じています。平原さんはSDGsの中でも、アパレル産業の課題についてもお詳しいと思いますが。
平原さん 難しい産業ですよね。でも想いを持って活動されている方がむしろ多いとも感じています。既存の職人さんのアパレル産業がファストファッションの為に淘汰されて。そんな中「これでいいのか?」という想いで活動されているブランドさんのお話に感銘を受けたことがあります。
熊谷 まさに。アパレル産業の悪い考え方の癖に「利益追求をするか、諦めるか」の2択で、その間には何も選択肢を産まない産業構造がある様に感じています。CACTUS TOKYOとしてはその両択を目指す形に挑戦している段階です。
平原さん そこって、自分が「どこが程よいのか」に関わっていると思います。「程よい」利益、「程よい」ビジネス、それを決めるのは自分自身で、その揺るがない「軸」さえあれば問題ない様に感じます。
サボテンレザーの魅力を多くの人に伝えたいと思うことや、環境問題がいち早く解決してほしいと考えるのも一つですが、その「程よさ」やサステナビリティを実現する自分だけの「軸」がどんな人にも備わってのことだと考えるので、CACTUS TOKYOさんだけでなく、読者の多くの方にも考えてほしいと思います。
ー貴重なお話ありがとうございました。
(インタビュー協力:平原 依文様)
ーお知らせー
HI合同会社の運営するオウンドメディア「MONOSASHI」
「MONOSASHI」は、国籍、年齢、職業、経歴を始めとする「枠」に囚われず、多くの人々の「軸」を中心とした多様なモノサシを集め、読者に自分だけのモノサシを見つけるヒントを届けることを目指します。 本メディアは、「自分の選択や人生を、何で測るのか」という問いを持った、HIの14-20歳の学生インターンが中心となって立ち上げ、今後も学生インターンで運営していく次世代中心型のメディアとなっていきます。
オウンドメディア「MONOSASHI」:https://www.hi-parters.com/monosash
ーProfileー
HI合同会社 代表
青年版ダボス会議 One Young World 日本代表・アドバイザー
教育未来創造会議(内閣官房):構成員
アドベンチャーワールド サステナブルSmileアンバサダー
株式会社アミューズ みらいエデュテインメント財団 理事
小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。東日本大震災をきっかけに帰国し、大学卒業後、新卒でジョンソン・エンド・ジョンソンに入社し、デジタルマーケティングを担当。その後、組織開発コンサルへ転職し、CMOとしてマーケティングを牽引しながら、広報とブランドコンサルティングを推進。「地球を一つの学校にする」をミッションに掲げるWORLD ROADを設立し、世界中の人々がお互いから学び合える教育事業を立ち上げる。2022年には自身の夢である「世界中の境界線を溶かす」を実現するために、HI合同会社を設立。SDGs x 教育を軸に、国内外の企業や、個人に対して、一人ひとりが自分の軸を通じて輝ける、持続可能な社会のあり方やビジネスモデルを追求する。共同著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢xSDGs』。Forbes JAPAN 2021年度「今年の顔 100人」に選出。